鴻巣市 S様邸敷地内のウメ剪定業務
ご依頼の内容は、ご自宅の敷地内にあるウメが枯れそうなので診てほしいとのご依頼を頂きました。このウメは施主様が産まれる前からあり、おそらく樹齢は100年程とのことでした。
樹体の1/3程は枯れていそうでしたが、「ばっさりと切ってしまうのは心苦しく、専門家の判断を聞いてから剪定を決断したい」と施主様からご相談を頂きました。
お客様情報
エリア | 埼玉県鴻巣市 |
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お客様名 | S様邸 |
受けたサービス | ウメ剪定業務 |
作業人数 | 2人 |
作業時間 | 0.5日 |
ビフォー・アフター
作業内容
初期診断をさせて頂いた6月には、葉がほとんどなく、木槌で打診してみると大枝には異常音(空洞化)がしました。
折れてそのままになっている枝や、虫糞(おそらくコスカシバ)が診られ、かなり樹勢は衰弱していました。
幹や枝に「地衣類(ウメノキゴケなど)」が多く付着していて、施主様がこれのせいで樹勢が悪くなったのではないかとご心配されていました。
地衣類は、外見や生育環境がコケ植物に似ているものがあり、名前に「〇〇ゴケ」とつけられているものも多いため、両者が混同されることがしばしばあります。しかし、地衣類は菌と藻の細胞から構成されており、コケ植物の組織とは全く異なります。
また、地衣類は菌類に所属しますが、藻類と共生して「地衣体」と呼ばれる特別な構造を作る点で他の菌類とは異なっています。地衣類の体を構成する菌類は、藻類が作る光合成産物を栄養として利用します。
一方で菌類は藻類にとって、いわば「住み家」を提供し、藻類を乾燥や紫外線から守っています。このようにお互い利益のある「共生」の関係で成り立っています。
このような地衣類(ウメノキゴケなど)は樹木が衰弱している場合に多く見られますが、樹木に寄生性はありません。偽根によって樹皮に固定されて浮いた状態であるため、樹木から栄養を吸収しませんし、樹皮を覆っても呼吸の妨げにはなりません。
加害があるとすれば着生被覆による光合成阻害が考えられます。しかし、枝への着生により光合成作用の阻害がどの程度行われているのかは不明です。
ウメの衰弱原因として考えらてることは
- ウメの木に当たる日の量が少ない
- 病害虫に侵されている
- 土壌環境が適していない
- 除草剤の撒布
などが挙げられます。しかし、ウメはせき悪な礫土壌でも生育良好ですし、首の皮1枚でも生きている株もあります。特にウメの実の収穫量を気にしないのであれば70~100年程が寿命となります。
このウメが上記のような原因のどれかで衰弱をしているとすると、ウメの下に植栽されているリュウノヒゲが密植していることで、水分をもらえない「土壌環境」が原因で衰弱したのではないかと診断しました。
土壌は湿潤に保てばよいと言う訳ではなく、ウメの場合適度な乾燥の方が好ましいと言えます。しかし、近年の温暖化の影響による夏の高温などで極度の乾燥が長年続くと、樹勢もどんどん衰弱してしまうことが考えられます。
リュウノヒゲは施主様が除去なさって下さることになり、当社ではウメの剪定作業を実施することとなりました。
樹高は4.5mほどでそこまで高木ではありませんが、クレーン車を使用し、吊るしながら剪定を行いました。9月に入ってから急に葉が落ちてしまい、生きている枝が分かりづらくなってしまいましが、木槌で打診音を聞きながら確実に枯れている枝だけを剪定していきます。
木の切り口には殺菌剤を塗布し、残された枝に腐朽菌が侵入するのを防ぎます。癒合剤のラックバルサンは保護効果の長いもので、キニヌールに含まれている煤には殺菌効果があります。
作業終了。「桜伐る馬鹿梅伐らぬ馬鹿」というようにウメは剪定をして手をかけてあげないと樹形の維持が難しい樹種です。しかし、今回はかなり樹勢が衰弱していることもあり生きている枝の剪定は行いませんでした。
担当者のまとめ
このウメは老木のため、今回は無理に土壌改良を行わず、来年の花の状況を確認してから今後の対策を考えていきたいと思います。ご依頼頂きましたS様、お世話になりました。ありがとうございました!
コバトンとは、埼玉県の鳥であるシラコバトをモチーフにした埼玉県のマスコットです。